神林レフェリー宅の風呂に入った選手は出世する
9月22日、全日本プロレス後楽園ホール大会へ。この日は「王道トーナメント」準決勝&決勝戦がおこなわれる。まず第1試合で本田竜輝がザイオンにパワー負けすることなく、得意技のファイナルベントでスリーカウントを奪取し、先に決勝へ進出。

本田を豪快に持っていって後方へ叩きつけるザイオンだったが、ラリアットからのファイナルベントという力技で本田が勝利、これで4年連続決勝戦へ
続く青柳優馬vs安齊勇馬は20分超えの大激闘となり、第2試合とは思えぬほどの盛り上がりが最後まで途切れず。この試合、安齊がドロップキックというオーソドックスな技をゲームチェンジに活用。ミサイルキックを含めると、連発式とは違う形で一試合に4、5発は出したと思われる。




身長と高い打点によって見栄えがするだけでなく、破壊力もあるためこれは実に有効と思えた。それ以外の技も含め、現場で見ている限りでは安齊のダイナミックな攻撃ばかりに惹かれたのだが、自宅に戻り写真を見るとどのカットもむしろ青柳の方に目が吸い寄せられた。
どれも大きく受け身をとることでダメージを最小限に食い止めている。これぞ全日本!と唸らされるほどのバンプが、そこには描かれていた。



ラリアットもジャンピング・ニーパッドもマトモに入ったため場内のムードは安齊に傾いたが、どれも青柳は威力に身を任せるかのごとく受けている。王道の極意、ここにありだ
もちろん、いくつも技を食らっているのだから自身のスタミナも消耗する。その中で勝利をつかむには、ここぞという時の集中力がモノを言う。動いた分、安齊の方が体力を消耗したところで青柳がたたみかけ、21分37秒の攻防を制す。

ロックスターバスターから、さらに旋回を加えたTHE FOOLで安齊を下し青柳が決勝戦へ進出。試合後はダブルゆうまとして斉藤ブラザーズの保持する世界タッグ王座への挑戦と、年末の世界最強タッグ決定リーグ戦への出場を呼びかけ、安齊も受託
体のデカい者同士のぶつかり合いが全日本の醍醐味だが、それを支えているのは脈々と受け継がれる受け身の技術。青柳が道場でコーチ役を務めるのも納得である。
かくして今年の王道トーナメントは、4年連続決勝に進みながら優勝を逃している本田と、9年連続1回戦敗退が続いた青柳による決勝戦となった。それぞれのシチュエーションにおいて、人一倍悔しさを味わってきた者同士だけに、全日本ファンの思い入れによる熱量が試合をあと押ししていった。
いつもはロープ際でやる高速反則カウント(レフェリーが数えるよりも食い気味に自分で素早く数える)を、場外鉄サクに青柳を固定して見せる本田に神林大介レフェリーが怒る。すると今度は青柳が本田のお株を奪い「ワン、ツー、スリー、フォーッ!」と3方向で。これにも神林レフェリーはオカンムリだ。


怒りの神林レフェリーに後ずさりする本田。だからといってやめはしない

青柳も神林レフェリーをおちょくるかのごとく3方向でやって、4方向目(南側)は逆にやるように思わせておいてやらず、手玉に取る
レフェリーの権威に関してはテコでも譲らない神林レフェリー。シリアスな決勝戦の中にも、こうした形で楽しませようとするのは二人ならでは。そこからは一進一退の攻防が続き、最後に押し切ったのは本田だった。タイムは25分33秒ということで、青柳としては2試合47分10秒で力尽きる形となった。


体重の乗ったラリアットや準決勝に続くファイナルベントを決めて青柳の執念を断ち切り初優勝を遂げた本田。これで両者のシングル戦績は本田の7勝2敗。2024年6月8日の5度目の一騎打ち以後は本田の5連勝だ
初優勝を果たした本田の手をあげる神林レフェリー。二人はかつて、武藤敬司率いるWRESTLE-1でも一緒だった。
本田は2018年2月11日に実施された「ゴールデンルーキープロジェクト」に応募し、合格。そのさい、自己アピールのコーナーでジャーマン・スープレックス・ホールドを披露した。

W-1所属だった芦野祥太郎と同じ自由ヶ丘学園レスリング部出身のため、スープレックスには自信があったのだと思われる。ただ、半年後にデビューを果たすも黒のショートタイツにリングシューズという没個性感もあり、鳴かず飛ばず。今とは比べものにならぬ線の細さで頭角を現すには時間を要した。
個性なき無色の新人クンが初めてその本性をさらしたのは、ニコニコプロレスチャンネルのW-1年間最大のビッグマッチ・横浜武道館大会煽り番組「24時間WRESTLE-1」だった。24時間、W-1の選手がさまざまな企画に登場。そこで2019年8月、アレハンドロと本田が神林レフェリー宅を訪問するというものがあった。