嶋田源一郎さんの口から出た「感動」の重み
10月29日は天龍プロジェクト新木場1stRING大会生配信実況→ニコプロ「どーのこーの」というスケジュール。会場へ着くと、先日の和田京平レフェリーとのトークイベント同様、たくさんの動画カメラが天龍源一郎さんに密着していた。
本日は全5試合でタイトルマッチは一つも組まれていない。そういう時こそ、得てしていいモノを見られるのがプロレスであり、いつもと比べて動員は伸びなかったが、この日に集まった観客は自分の嗅覚を誇るべきだと思った。
第3試合で組まれた矢野啓太と翔太の一騎打ちは、天龍プロジェクト以前からアンダーグラウンドで何度となく顔を合わせてきた二人。このリングで再会し、インターナショナルジュニアタッグのベルトを巡り渡り合った時期もあったが、今年3月20日に翔太がプロデュースした配信マッチ(無観客の中、61分3本勝負で対戦する)によって、フェーズが上がったように思う。
この時の矢野が、3本目を獲った技がピンフォール狙いにもかかわらず大変な拷問技でインパクトがあった。後日、本人に確認したところ「ツァラトゥストラ」という名称らしい。

結果的に矢野は翔太の左肩を固め、矢野の体重を翔太の右肩に乗せて動きを止め、矢野の前腕がギロチンチョークの要領で翔太の首の動きを制限してる
三点固定されたら動けない
#翔太vs矢野啓太61分3本勝負



ミニマムな試みを経て展開された両者のシングルマッチは、まさに純度100のプロ・レスリングと言えるもので、すべての動作がピンフォールorギブアップを獲る目的一点に集約されたスタイル。これは矢野啓太の功績なのだが天プロ再始動後、このような方向性のレスリングを続けてきたことで見る側の理解力も増した。
だからこの一戦も、ここはお互いが何を狙っているかと思考しながらオーディエンスが見入っていた。それこそが、天龍プロジェクトの誇る空間だ。

ロックアップでもお互いにギブアップを獲ろうとかけ合い、そのままの状態でリング下へ転がり落ちたあともなおかけ続ける
最後はレッグスプレッドでギブアップを狙いつつ、そのまま翔太の両肩をつけて矢野がスリーカウントをゲット。見事なまでのフォール技術だ。思わず唸った天龍さんに「こういうプロレスがほかの団体でも見られるようになればいいですよね」と振ると「でも、そうはならないんだよな。彼らにはそこまでのネームバリューがないから」という言葉が返ってきた。

ピンフォールを獲りに来るとは思わず、虚を突かれる形となった翔太としてやったりの矢野
理想論ではなく、どんな技術を備えたとしてもチケットの売り上げにつながる、つまりは数字を持った人間でなければなかなか拡がっていかない業界の現実的な部分を、天龍さんは嫌というほど知っている。だからこの言葉は、矢野と翔太の知名度がまだまだ足りぬ点を指摘するのではなく「有名か無名かなんて、そんなことで物事を判断せずに本質を見極めんかい!」といった憤りに聞こえた。
常々、天龍さんは「天プロの試合はどこへ出しても恥ずかしくない」と言い続けてきた。だが、ミスタープロレスが発信した言葉であっても闘う当事者とは違うため、なかなか拡がっていかない。そこに少なからずジレンマを抱えている。
休憩時間前に聞いた天龍さんの言葉を引きずりつつ、メインへ。笹村あやめ&橋本大地&渡瀬瑞基vsMIRAI&永尾颯樹&名島アリと、顔ぶれを見ただけでは男女混合という以外はこれといったテーマもなさそうに映る。
でも、事前のテーマがなければ試合の中で自然とそれが生み出されるのもプロレスだ。前半、橋本大地が名島アリに対し“上から”のやり方で圧をかけていく。これにアリが反発し、向かっていった。
これだけで試合の方向性が定まる。大地が描こうとした世界観にアリ以外の4人も呼応するかのようなファイトを見せていき、ライブ感が発生。女子の中では当たりの強さが個性のMIRAIを一発のエルボーで体ごと持っていく渡瀬に、天龍さんが「今まで渡瀬は佐藤光留や耕平にさんざんやられてきた。その下地があるからこそ、力強さを身につけられている」と言った。
残り時間1分を切ったところで、6人が次々と投げっ放しジャーマンを繰り出す。投げた選手に別の選手が組みついて後方へ持っていくと、今度はまた別の選手が組みつき…これが8連発ほど続いた。