毎年終戦を迎えながら宇宙大戦争が続くそもそもの理由
10月24日はみちのくプロレスへ。コロナ前までは後楽園ホールと並ぶ東京大会という位置づけで、2月と秋の年2回開催されていた新木場1stRING大会。2020年2月15日以後はそれも途絶え後楽園のみとなる。
理由は明白で、コロナ明けのソーシャルディスタンス仕様で観客を入れても盛岡から移動し、その日のうちにハネ立ちしたとしても採算が合わなかったため。それでも昨年10月25日に「SHIN-KIBA Restart」と銘打ち、5年8ヵ月ぶりに復活させた。
その時は天龍プロジェクト大阪大会の生配信実況があったためにいけず、自分にとっては6年8ヵ月ぶりのみちのく新木場。矢巾町民総合体育館とも違う実家のような安心感がある。
というのも、後楽園よりも普段着のみちのくが見られるからで、拳王が在籍している頃は阿修羅と九龍の抗争真っ只中、フジタ“Jr”ハヤトとバッチンバッチンやり合っていた。月日は経ち第1試合に出場したのは、その頃にいなかった若手同士。9月5日にデビューを迎えたばかりの細沼翔流(ほそぬまかける)を初めて見る。

これがデビュー10戦目の細沼

パープルのタイツとニーパッドの熊谷は逆エビ固めで新人を料理
相手の熊谷空風(くまがいくう)も3月21日にデビューし、まだキャリアは7ヵ月。立ち上がりのレスリングの攻防から最後まで基本に忠実な試合に終始していた。大瀬良泰貴と現・KUUKAIの川村興史のデビュー時を思い起こす。
山谷林檎🍎、佐藤維(つなぐ)と並び若手が充実してきたみちのくプロレス。数年後の風景が楽しみでならない…などと言っている間もなく、11・1岩手県営体育館では、佐藤がサングレ・アステカJrの東北ジュニアヘビー級王座へ初挑戦する。
佐藤はデビューから1年7ヵ月で団体最高峰のベルトへ初挑戦。みちのくとしても地元におけるビッグマッチのメインを託すのは冒険でもあるが、メインの動きを見た限りではこの若者に懸けたくなるのもわかる気がした。

タイトル挑戦を前に王者・アステカJrに対し素晴らしい動きを見せた佐藤維
昨年11月よりみちのく所属となったMIRAIが練習中にも見とれてしまうというほどの佐藤の立体的な動きは、この日の中でも突出していた。黒のショートタイツにリングシューズと、見た目は地味ながら飛び技を繰り出す姿が極めて自然体なのだ。
つまり「空中殺法をやっている」感覚ではなく、そうした動きをするのが当たり前の生命体という認識を持ってしまう。それは、スワンダイブ式の技やアトミコ、ムーンサルト・プレスとどんな立体的な動きを見せる時も、佐藤が実に楽し気だから。難なく動いてしまうばかりか、公園の乗り物に飛び乗っては戯れる子どものように映った。
回転数を増やしたり、より高いところから飛んで難易度をあげたりする必要は、佐藤の場合はない。自然と体が動くようなことをスイスイと見せれば、独特のリズムとグルーヴが発生する。
佐藤はプロレスリング・ノアのジュニアシングルトーナメント「NOAH Jr. GRAND PRIX 2」にもエントリーされ、11・9後楽園の1回戦でキッド・ライコス2号と闘う。岩手県営でベルトを獲れば東北ジュニアヘビー級王者として乗り込むこととなるが、ベルトがあろうとなかろうと印象に残る試合をやってのけるだろう。
佐藤、マルカンソフトマンとのトリオでメインを務めたMIRAIだが、今やみちのく一番人気。東京ではほかのリングで見る機会の方が多い中、ちゃんと自分の所属する団体で愛されているのがわかったし、いつも以上にイキイキしていたようにも映った。

ソフトマン、佐藤とのトリオでみちのく東京大会のメインを務めたMIRAI

こちらが現在、みちのくのベルトを独占する3人。左から大瀬良、アステカJr、ARASHI。11・1盛岡ビッグマッチではアステカが佐藤、大瀬良&ARASHIがソフトマン&マスク・ド・コッペの挑戦を受ける
2AWの笹村あやめ&彩月悠叶のように、男子団体の中で日頃から対戦するうち体の耐久力と当たりの強さが身についてくる。MIRAIにとってはそれがアドバンテージになる一方、日々悔しさを味わうのがデフォルトのごときシチュエーションだ。

プロレスラーになる前は大好きで応援していた大瀬良も、今や悪い人になってしまった。それでもMIRAIは正面からぶつかっていく

MIRAIをブサイクな顔に追い込むチャンピオントリオ
この日も大瀬良&ARASHIの東北タッグ王者組と、アステカというチャンピオントリオに正面からぶつかっていくも、ほんろうされた。宣言通り、MIRAIに東北ジュニアヘビー級王座へ挑戦できるほどの地力がついた時、みちのくはまた新時代を迎えるはずだ。

マスクを剥がされたスキに丸め込まれてしまったソフトマン。東北タッグ挑戦時には奪われぬよう対策を立てるという

MIRAIの音頭により「みちのくプロレスは永遠に不滅だーっ!」で締める時代ですよ
さて、毎年秋頃になると「そろそろ宇宙大戦争も近づいてきたなあ」といった声が聞こえてくる。不思議なことに、前年の12月に完全決着を見てザ・グレート・サスケが「終戦」を宣言しても、まるでなかったかように囁かれるのだ。
言うまでもなく「今年で最後」とのたまいながら、もう何年続いてんだよ!と突っ込みたくなるほど毎年12月の後楽園ホールで開戦しているからそう思われて当然だが、少なくともサスケ本人は本気で終わらせるつもりで闘い、またそのために何もそこまでというほど体を張ってまで勝利にこだわってきた。
「戦争なんていうのは、続けるためにやるものではない。終わらせることを目的として闘うのに、世間の皆さんはあたかも継続させるために毎年宇宙大戦争をやっているという、実にうがった見方をする。そんなのは本末転倒ですよ」
以前、サスケがそのように熱弁を振るっていた。そもそも、戦争なのに「風物詩」とはどういうことだとなる。