今でも平田智也の慟哭が耳にこびりついているから――
8月20日はプロレスリングFREEDOMS後楽園ホール大会を取材。3日後に迫った闘道館イベント「FREEDOMS横浜武道館大会公開記者会見&佐々木貴デビュー30周年記念トーク」の告知と予約受付を売店でやらせていただく。
年間最大のビッグマッチである9・6横浜武道館を17日後に控えながら、この時点で全カード決定には至っておらず。なので大会出場選手及び公開記者会見出席選手も確定していない。
呼びかけていると、何人かのファンに「〇〇選手は会見に出ますか?」と聞かれたのだが、そのような事情のためハッキリとは言えず申し訳なく思いつつ、それでも5人の方に予約いただき、残すところ十数席となる。なぜにここまでカードが未定だったかというと、この日が終わるまでビオレント・ジャックと平田智也のどちらが団体最高峰のタイトル・KING of FREEDOM WORLD王者としてメインのリングに立つかが決まらないため。メインカードが流動的となると、それ以外にも影響が及ぶ。
この日の大会の結果をもって、主要カードは確定的なものとなる。そうした期待もあってか、ビッグマッチ直前の後楽園大会にもかかわらず、なかなかの入りとなった。

ただ、それ以上に場内の雰囲気から伝わってきたのは平田を推すFREEDOMSファンの熱量。現チャンピオンのジャックは5度目の王座戴冠にしてもっとも脂が乗っており、竹田誠志、葛西純の二大強豪も退け丸1年で6度の防衛に成功。この日、挑戦する平田も2月12日にチャレンジしたが、完敗と言っていい内容で退けられた。
ジャックが防衛回数を重ねてきたこと以上にすごいのは、各防衛戦ごとに挑戦者との関係性による物語をデスマッチのリングで描き、常にソウルフルな空間を生み出してきた事実。だから、FREEDOMSのリングに定着し13年以上が経過しながら、ここに来てさらに支持率を上げている。
日本語がペラペラのジャックではあるが、イントネーションはやはり独特のものとなる。それが逆に、気持ちの伝わるメッセージとして観客に届き、胸を打つ…そんな場面が、防衛戦のたびに見られてきた。

2022年5月3日に初進出以来、FREEDOMSは年間最大規模の興行と位置づけ横浜武道館大会を年一ペースで開催してきたが、ジャックがメインを務めたことはまだない。だからこそ長きにわたりFREEDOMSで血を流し続け、その身を捧げてきたジャックに一度は檜舞台に立ってほしいとファンが願うのも当然だ。
ただ、そうしたファンほど同時に平田の涙を見てきている。奇しくも2023年3月23日にジャックを破りKFCのベルトを初めて奪取したあと、王者として2度目の横浜武道館(2023年8月11日)のメインに立ちながら、試合前半に場外へダイブを受けたさい左足を骨折。戦闘不能状態となり、即座にレフェリーストップをかけられた。
団体にとって一年でもっとも大きな大会のメインを任されながら、試合として成立させられなかったことで平田は慟哭をあげた。もちろん骨折した足の痛みもあっただろうが、それ以上に「なんでこんな時に限って…」という無念の思いが、言葉にならぬ声となって表れた。