世界一還暦っぽくない還暦erとなるには
9月3日、鈴木健.txtは還暦となりました。60年前に会津若松で生を受けて以来、特筆すべきいいことをやったわけではなくむしろ他人様のお世話になりっ放しジャーマンの自分のような人間が、無事この年齢に達したのはそれだけで恵まれているなと心底思います。
ただ、昨日も書いた通りまったく還暦感が見受けられない。私の中にある還暦のイメージはなんといっても、赤いちゃんちゃんこを着てニッコリしているジャイアント馬場さんのお姿なのですが、どー見てもあの時の馬場さんと同い年には見えません。これは自分だけでなく、周囲の方々も100%同じ認識と思われます。
私は若く見られることに執着したり、あるいは意図して若作りしたりしているところは微塵もありません。それこそ「老けたな」と思われるのであれば、これが自然な姿である限りまったく受け入れられます。
若く見えることには特に価値を見いだしておらず、単に現在の身なりは自分の趣向に合った色使いや服装によるもので、おじさんに見られたくなくて年甲斐もない格好を無理やりしているという意識は正直、皆無です。
おそらくこれから皺がたくさん出てきて髪の毛が薄くなったり、動作そのものが鈍くなったりするなどの老化現象が顕著なものとなっても、身なりに関しては同じだと思われます。そもそも年齢に合った格好でいようという意識がないもので。
では、そういう外的な要素を抜きにしてもなぜに同年代の方々と比べて若く見えるのか(自分自身はそれを若さではなく成熟していない姿として認識しているのですが)。一つは「偉そうに見られたくない」という思いが強いからだと思います。
人間はキャリアを積み、その中で実績を重ねることで評価され、ステータスが上がっていくものです。それはそれで価値観として成り立つのですが、どうも自分は年が上だというだけでよけいな気遣いをさせてしまったり、もっと言うと偉い人に見られるのが性に合わないんですね。
いや、本当に偉い人は偉く見られるべきですし、それ相応の対応をされてしかるべきです。だから「偉い人」と「偉そうな人」…もっと言うと「偉そうにしている人」は別モノであり、私は3つ目の偉そうにすることで周りに気遣わせてしまうのが、本当に嫌で。
それもあって、自分の実績や年齢を抜きにして偉そうに見られないようにするのが体に染みついてしまっているのです。これは当たり前といえば当たり前なのですが、たとえばプロレスラーに対しては基本全員が「さん」or「選手」づけです。プライベートでは仲が良く名前やニックネームでカジュアルに呼び合う中でも、番組やイベントといったパブリックな場では「さん」か「選手」をつけて呼ぶ。たとえ無生物のヨシヒコ選手であっても、あるいはかつてのラム会長さんや里歩選手といったキッズレスラーであっても、さんづけです。
でもこれがSNSになると、その意識が緩くなって選手を呼び捨てやニックネームで呼ぶ傾向が高まる。もちろん人それぞれのスタンスがあり、ましてや当事者同士の距離感や関係性もありますから、許容される範囲も違ってくるので一概にはくくれません。ただ、自分の価値観ではそれができない。
なので、何かしらの意図があって呼び捨てや(報道としての文章はそれが基本)ニックネームで書く場合は極力断り書きを入れるようにします。そういう姿勢を続けていれば、偉そうには見られないだろうなと。
偉そうにすることのすべてが悪いと言っているわけではないですよ。世の中には本当に偉くて、ちゃんと偉そうにしなければならないポジションの方もたくさんいます。それが威厳であり貫録、説得力や存在感を生むのですから。
幸いというべきか、私は偉そうに見せる必要のある人間とは違うので、偉そうでない人生を満喫できるわけです。その上で、実績として誇れることができればなおいい。
偉い方々は、やはり人生の年輪を重ねるごとに年相応の雰囲気をまとうようになるもの。私はそれを放棄することで、実年齢よりも成熟していないビジュアルに映っているのではと自己分析します。
もう一つ、よく老けない秘訣を聞かれるのですが、これはハッキリ言えます。毎日笑うことです。
ストレスを抱えると老化が早まります。もちろん日々の中でうまくいかないことも、ネガティブな感情を抱くこともありますが、それでも一日のうちどこかで笑えばポジティブになれる。
笑いを得る上で重要なのは、面白がれる姿勢。ちょっとしたことでも膨らませば、笑いの対象にまで持っていけます。
私がMCや実況、コメンタリーで話や目の前の出来事を膨らませるのは、それによってオーディエンスや視聴者の皆様に楽しんでいただくためではあるのですが、同時に自分自身が面白がることも目的。そこで「ふざけている」といった受け取り方をされる場合もありますが、その声に対する回答は「そうです。技量を駆使し、心の底から真面目にふざけています」です。
楽しんでもらうために、また自分も楽しむために全力でふざけます。その上で、笑いがそぐわぬ試合に関してはギアチェンジし、別の楽しみを味わっていただくべくソウルフルであったり、エモーショナルな言葉を使って伝えます。
イメージ的に私は、すべての試合に関して面白おかしくやっていやがると思われがちで、それによって損をしているなところもあるのですが、そう受け取られる間は偉そうに見えないだろうからいいかなとも解釈しています。毎日笑い続けることが難しいという方もおられるとは思いますが、そういう場合はやはりプロレスを見てくださいと答えるようにしています。
プロレスは喜怒哀楽を表現するジャンルであると同時に、最終的には喜びや楽しさ、笑いといったポジティブなものに落とし込んでくれます。そんなプロレスと出逢い、この年になっても業界の末席へいられることが、確実に今のまったく偉そうじゃない見映えにつながっていると思っています。
そんな還暦初日はいつもと変わらぬ一日で、新宿御苑方面でDDT・上野勇希選手のインタビュー。普段はこんなことを絶対にリクエストしないのですが「還暦になって初めて一緒に写真を撮った人になってください」とお願いしました。

この世界にいればそれが何気ないやりとりであっても、やっぱり自分は恵まれているなと思います。22歳で週刊プロレス編集部に潜り込んで、38年後に団体を代表する選手と同じ空間にいられるなんて、当時は考えも及びませんでした。
上野選手にご協力いただき、私の六十代はこの言葉からスタートさせることができました。「ありがとう」――。
というわけで、これからは世界一還暦っぽくない還暦erを目指します。目指す…ん? 違うな、なったら結果的にそうなったの方が正しいかな。
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