新宿という都市とのセッション――歌舞伎町の表情を変えたTHE SPELLBOUND×BOOM BOOM SATELLITES

川島道行生誕祭新宿歌舞伎町野外フリーライブ
鈴木健.txt 2026.08.26
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8月24日は日中、東陽町でサムライTVのプロレスリングFREEDOMS8・20後楽園ホール大会中継のMA収録。一度自宅へ戻り、30分後には歌舞伎町へ。かねてからこの日にTHE SPELLBOUND×BOOM BOOM SATELLITESの野外フリーライブ(無料)が開催されると告知されていたものの、1週間ほど前まで会場は明かされなかった。

その時点で「BOOM BOOM SATELLITESの規模で野外ライブをやるとしたら、あそこしかない」と思っていた通り、歌舞伎町のド真ん中にある東急歌舞伎町タワー前シネシティ広場と明かされる。いわゆるゴジラビルこと新宿東宝ビルの隣にあり「トー横」とされる一角。ここではさまざまなイベントが開催されており、歌舞伎町タワー1Fのステージではライブもよく見られている。

私自身も今年4月17日に、この広場へマットを敷いたプロレス「KABUKICHO STREET WRESTLING」で現場実況を担当したばかり。まさかその4ヵ月後に同じ場所で、THE SPELLBOUND×BOOM BOOM SATELLITESがライブを演るなど想像もしていなかった。

マットプロレスを開催した時の模様

マットプロレスを開催した時の模様

広場の隣に立つビルのヒューマックスパビリオンにはプロレスのメッカ・新宿FACEがあり、年間を通じ30回は取材で足を運ぶ。もちろん東宝ビル内にある映画館も日常的に利用し、歌舞伎タワー内の109シネマズプレミアム新宿は音響面を坂本龍一が監修していることもあり、最後のライブを収録した映画『Opus』やドキュメンタリー作品『Tokyo Melody』をここで見た。

自宅より自転車で向かえる距離にあるため、歌舞伎町は仕事的にも個人の文化圏としてももっとも馴染みのある街。だから、この広場でおこなわれるイベントに関してはけっこう横目で見て来た。

BOOM BOOM SATELLITESのライブにおける爆音と音圧を浴びている一人として、あの空間でそれを全開にしたら大袈裟でなく街の情景が変わると思った。都会の雑踏と喧騒がいかがわしさを漂わせながら耳にこびりつく歌舞伎町独特のサウンドがある。それは、どんなイベントがおこなわれようとも不変のものだ。

このライブはBOOM BOOM SATELLITESのメンバーである(過去形ではない)川島道行さんが2016年10月9日に没後、今年で十周忌であり、また8月25日が57回目の生誕日であることから企画された。川島さんとの別れのあと、もう一人のメンバーである中野雅之は2020年12月よりTHE NOVEMBERSの小林祐介と新たるバンド・THE SPELLBOUNDを結成し、本格的な音楽活動を再開する。

THE SPELLBOUNDとしてもBOOM BOOM SATELLITESのナンバーを演奏し、少しずつレパートリーも増えていった。初めてそれを聴いた瞬間、体が鋭利な何かに貫かれた感覚となった。小林のヴォーカルが、川島道行そのものだったからだ。

小林は生前の川島さんに多大なる影響を受け、テレビの音楽番組に出演したさいも「アーティストが語りたい天才たち」のテーマでBOOM BOOM SATELLITESと川島さんに対する深い思いを語った。その関係性を知る者であれば、誰もが中野と小林の邂逅は運命的であり、必然だと思っている。

YUSUKE KOBAYASHI
@Pale_im_Pelz
#EIGHTJAM ありがとうございました。

いまこの瞬間も、川島さんはBOOM BOOM SATELLITESの音楽の中で歌っています。これからも僕たちと共にあります。

みんなで鳴らし続けましょう。

会いたいなあ。会って沢山話したい。
EIGHT-JAM【公式】(テレビ朝日系)@EIGHTJAMtvasahi
今夜の #EIGHTJAM は
【アーティストが語りたい天才たち🫧】

★#小林祐介 (#TheNovembers/#THESPELLBOUND)、#川谷絵音 #関根史織(#BaseBallBear)がスタジオに‼️

★早過ぎた才能N、二度と会えないK、聴いたことない音楽S、ファンに愛され続けるY...✨

★プロが熱弁する4人の天才たちの魅力とは❔ https://t.co/jllYqYXuJ1
2024/06/03 00:11
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BOOM BOOM SATELLITESの楽曲を演るのは当初、それぞれに葛藤もあったはず。特に小林にとっては、あこがれであり尊敬する存在だからこそ川島さんの唄を自分が歌っていいものかと考えたのは、一度や二度ではなかったはずだ。

それを乗り越えてでも歌おうとした小林祐介という表現者は強いと、心から思う。はじまりの時点でモノが違った。とにかく圧倒させられた。THE SPELLBOUNDとして新たな音楽をクリエイトするのと並行し、もう一度BOOM BOOM SATELLITESの楽曲に息吹を与えてくれた。

2021年小林祐介が僕の背中を押してくれたおかげで、再びBOOM BOOM SATELLITESの楽曲を演奏する事が叶いました。THE SPELLBOUNDを立ち上げるにあたって、BBSの楽曲は封印していくつもりでした。小林くんの強い希望で、恵比寿LIQUIDROOMでのTHE SPELLBOUNDのファーストライブでBACK ON MY FEETを演奏したのが事の始まりです。この時僕と小林くんの間でちょっとしたマジックが起きて、胸の奥に熱いものを宿した後、少しずつ丁寧に曲数を増やして演奏を重ねて、現在に至ります。

2026年、このメンバーで演奏するBOOM BOOM SATELLITESの曲達に強い誇りと自信を感じています。(BOOM BOOM SATELLITES 川島道行10周忌メモリアルプロジェクト始動時の中野のコメント)

私は小林を見ていて現在のハヤブサとオーバーラップさせてしまう。その背負ったものの大きさは、本人にしかわからない。歌い方や声、ファッションだけでなく所作やたたずまいまでまとうには、精神性の部分でも高いハードルをクリアしなければ不可能だ。

川島道行10周忌メモリアルプロジェクトとしてBOOM BOOM SATELLITESのセットリストでツアーを回り、そしてこの日は川島さんとともに歌舞伎町のド真ん中へ立って街の情景が変わってしまうほどのサウンドを鳴らす。開始1時間半前に到着すると、すでに歌舞伎町タワー前にはこれまで見たことがなかった数の人が集まっていた。

柵で囲まれたスペースの外には別の列がなされており、そちらは同時刻に新宿FACEでおこなわれるSareee自主興行の開場待ちだった。合流した知り合いが、一度そちらへ並んでしまい「プロレスもこんなに列ができるぐらい人気があるんですね!」と驚いていた。

「これ、プロレスの興行中にライブの音が聴こえてくるのでは?」と思った。新宿FACEだけではない。ステージの脇にはAPAホテルがあり、東宝ビルの1Fは飲食店が並び、ド正面にはセブンイレブンもケンタッキーフライドチキンも銀だこもある。もっと言うなら、この日は歌舞伎町タワー地下3F&4FのZepp SHINJUKUで3marketsのライブもおこなわれる。

19:00を境に、この一帯の空気感が一変する。その瞬間を味わえるのは、歌舞伎町に馴染みのある者として貴重な体験となる。

徐々に薄暗くなる歌舞伎町。タワーのビジョンにはBOOM BOOM SATELLITESのMVや10月9日(川島さんの御命日)にSGC HALL ARIAKEで開催されるツアーファイナル公演の告知映像が流され、その上空を飛行機が通過していく。

ビジョンに映し出されているのは、川島さん生前最後のシングル曲「LAY YOUR HANDS ON ME」のMV。川島さんの娘さんが出演した

ビジョンに映し出されているのは、川島さん生前最後のシングル曲「LAY YOUR HANDS ON ME」のMV。川島さんの娘さんが出演した

数時間前まではステージと広場の間に公道があるため、普通に人が行き交っていた。日常的な風景が、中野と小林、そしてBOOM BOOM SATELLITES時代からサポートドラマーを務めてきた福田洋子の3人が登場し「Kick It Out」のイントロを鳴らした瞬間、確かに歌舞伎町の顔つきが変わった。

野外ライブといってもFUJI ROCKやSUMMER SONICのようなシチュエーションとは違う。無防備なほどにむき出しの人間で溢れ、都市の呼吸に満ちた建築物に囲まれた空間なのだ。

今までに見て来たライブとまったく異なる風景。にもかかわらず、それらを包み込むサウンドはBOOM BOOM SATELLITESそのもの。なんと言えばいいだろう…映像編集が施されたMVの中へ、自分がいるかのような感覚だ。

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